前回のエントリーで劇場版”文学少女”を見に行ってきたことを書きました。今回のエントリーではもう少し内容に突っ込んだ感想を書いていきたいと思います。

いちおう配慮はしますが、ちょっとネタバレあるかもしれないので注意してくださいね。


■劇場版のストーリーを評価する


劇場版のストーリーについては、見る人によって評価が別れるとは思いますけど、原作の”文学少女”シリーズの良さはじゅうぶんに活かされていたのではないかと僕はみるんですがどうでしょうか?


原作の各巻の流れとしては、事件が発生して、登場人物たちがどうしよもなく追いつめられて、どうしようもなくなったところで、遠子先輩の介入によって救われるってフォーマットがあると思います。

劇場版もその流れがきちんとなっていて、下手にいろんな他の要素がなかったものだから、そういった部分が原作よりすっきりした感じで表現できていたと思います。

たしかに原作はキャラが死んだりしてもう少しサスペンス色が強かったり、劇場版はキャラクターの描かれ方が浅かったりして、”文学少女”シリーズの物語のエッセンスを完全に取り入れてるとは言えない部分もあるかとは思います。

しかし、逆に言えば、いろんなものを削ったことによって、主題がはっきりして、わかりやすい物語になったのではないでしょうか。話として原作より柔らかく、優しく感じました。


原作の毒の部分というか負の部分は弱めで、物語の主題をぼかさなかったところを評価したいと僕は思いました。

きちんと文学と物語を絡めている部分もしっかり描かれてましたしね。あの尺で納めようと思うとどこか削らなきゃいけない訳ですし、その取捨選択は正しかったような気がします。


クライマックスの部分は演出過多と感じる人もいるかもしれないですけど、文学、創作をベースとしているストーリーですんで、まあこのくらいは許容範囲ではないかと。

アニメとか見慣れていないひとは違和感を覚えるかもしれないけど、アニメだからこういう演出もできるのではって思います。


■遠子先輩のというキャラの存在を考える


原作でも思ったんですけど、遠子先輩のキャラがイマイチ浮いてるような気がしますよね。特に事件が進行している間は蚊帳の外というか、マスコットキャラか?って思うくらいにあまり直接事件に関わってきません。劇場版でも、事件のキーパーソンになっていた美羽にも、直接会ったのはクライマックスシーンだけです。

物語の主幹は表題にある”文学少女”であるところの遠子先輩を置いて進んでいくように見えます。

しかし、事件がどうしようもなく行き詰まった時に、颯爽と現れて事件を解決していくのがこの遠子先輩というキャラです。物語に救いをもたらす女神、ぼけぼけしてそうに見えて、実は頼りになるスーパーヒーロー。そんな立ち位置のキャラクターなんですよ。


実は原作を読んでいるとき、遠子先輩って(物語の中で)リアルなキャラじゃないんじゃないかと思ってたりしました。

ファンタジーな部分を廃したリアルな世界設定とキャラ設定を採用している割に、遠子先輩は「物語を食べる」という無茶な設定だし、読んでいる時にその違和感とどう処理していいのか、正直とまどいました。

最後は実は心葉の想像上の人物だったとか、実は人間じゃないとか、そんな酷い設定が出てくるんじゃないかと心配しました。まあ実際はそうではなかったんですけどね。


しかし、劇場版見てなんとなく分かりました。遠子先輩は”文学少女”なんだと。心葉たちの物語を外から眺めている、読者(視聴者)に近い存在なんだと。

そして、事件が行き詰まったときに、外の世界から救いの手をさしのべる読者の代理人なんだと。そのあたりが、この物語に引き込まれる絡繰りだったのではないかと、ちょっと感じました。


たしかに原作では遠子先輩に言及する部分もありますし、結局物語の中でも心葉の妄想が生んだキャラでも、宇宙人とか異世界人とか、そういう世界観をぶちこわしにするようなキャラではないのですが、やはり物語の登場人物たちとはちょっと違った特殊性を持つキャラであると僕は思います。

だから、最後に遠子先輩と心葉の関係がああなるのも、頷けるというものです。


■僕個人は高く評価したい作品


原作では、いろいろ他のインパクトが強すぎて、物語の主題が分かりづらいところがあった気がするんですが、劇場版はそのあたりわかりやすかったなと。

原作ファンの中には全然原作の雰囲気が活かされていないと感じる人もいるかもしれませんけど、僕は評価しますね。それに演出も、ストーリーも綺麗にまとまってるなあと思いました。


アニメ化されるという情報を知ったとき、原作には「物語を食べる遠子先輩」とかどちらかというと文学的表現(?)の部分も多いし、物語の背景には文学小説があるので、文字では表現しやすくても、ビジュアル化したときに、表現しきれない部分があるんではないかと心配しました。

しかし、その辺は上手く処理していたなあと思いました。「物語を食べる遠子先輩」という設定は冒頭に出ただけで、話の中ではほとんど強調されませんでしたからねー。そのあたりは制作は考えたのではないかと思いました。


そんな訳で、劇場版”文学少女”、あまり期待していなかった反動もあると思いますが、良かったと思いますよ。

何度も言うようですが、ネタバレしちゃってるのが惜しいけど原作未読の人でも楽しめると思いますしね。まあ僕も原作のファンなんで、そのあたりの補正もあるかとも思いますが。

あまり話題になっていない気がするので、ちょっとがんばって応援していきたいなって思います。機会があればもう一度見に行ってもいいかなって思えるほど良かったと思います。

DVD?出たら買うに決まってるじゃないですかw


今後もなにか気がついた事があれば、書いていきたいと思います。


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劇場版”文学少女”を観てきました。

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