最近、アニメの聖地巡礼がよく話題になってますね。「らき☆すた」の舞台のモデルとなった埼玉県鷲宮町の鷲宮神社や「ひぐらしのなく頃に」の舞台のモデルになった岐阜県の白川郷などが有名ですよね。

聖地巡礼とはアニメ作品やゲーム作品の舞台となったり、舞台のモデルになったりした場所を巡る事を言います。ちなみに物語の舞台を巡る聖地巡礼というものは昔から行われていた事で、以前は映画や小説の舞台やゆかりの地を巡ることをそう呼んでいました。

昔のアニメやゲームは特定の場所を舞台にするような事はあまりありませんでした。あったとして、もそれほど重要視されなかったので、聖地を巡るような事はありませんでした。たとえあっても一部のディープなマニアの話で、それが話題になることはなかったと思います。

近年、特にネットが発達してからは、作品の舞台になった場所の情報なども得られやすくなり、またファン同士の情報交換も容易になり場所も特定しやすくなったということもあり、アニメやゲームの聖地巡礼が行われるようになりました。

ただ、この言葉、ネット等を見る限り、アニメファン以外の一般人からはあまり良い印象を受けていないように見受けれます。気持ち悪い連中が大量に訪れていると、面白おかしくかき立てる記事が多い気がします。事実、私も聖地巡礼というものにはあまりいい印象を持っていませんでした。行くと地元の人とかから白い目で見られそうで、行くのが怖いというイメージでした。


■聖地巡礼は史跡巡りに似ている。


私はアニメファンでもある他に歴史ファンでもあります。歴史を勉強する一番の方法は史跡や博物館を巡る事です。

歴史書や歴史小説などを読んで勉強するより、実際に行って、史跡や歴史資料を肉眼で見て、触れて、感じる事でより深く歴史を理解できる。歴史上の人物が見たであろう景色、使ったであろう物、書いたであろう書物などを実際に見ることによって、その人物か何を感じ、何を思ったかを感じる事が出来ます。

イメージの中でもやもやしていたものがはっきり感じられるようになります。また時間とお金と労力を使ってそこまで行く事によって、その場所が深く印象づけられ、その歴史に関する感心がより深くなるという効果もあると思います。

聖地巡礼はそれと良く似ています。行くことによってその作品への感心が深くなる、印象強くなる。また登場人物達に対する共感みたいなものが生まれる。

史跡と違って創作なので、そこにキャラクターが立ったという事実はないにせよ、どういう気持ちでこの景色を見たか、どういう場所で登場人物たちは過ごしたのか。また制作者に感心があるファンは、制作者がどんな場所を見て物語を生み出したかを感じ取れるかもしれません。

舞台のモデルになった場所に行く事によって、物語の理解に深みが生まれます。また行ったという事実自体が作品への愛を深める事にもなります。行った想い出として関連づける事によって、行く前とはまた違った思いをその作品に持つようになるかもしれません。

もちろん同じファンとの交流の場としての機能も果たしてくれるでしょう。巡礼ノートなどでファン同士のコミュニケーションが行われたりします。聖地巡礼でファンとして得られる物は案外大きいです。


■観光地を知るきっかけとしての聖地巡礼


聖地巡礼は、今までまったく縁もゆかりもない土地を知るきっかけとしても機能します。名前さえ知らなかった場所。たいして感心のなかった場所に行ったり知ったりするきっかけを与えてくれます。地元にとってはいい観光PRになるんではないでしょうか。

それを歓迎するか否かは、それぞれの事情によって違うとは思いますが、こういう機会を利用しない手はないと思います。相手がオタクだからと偏見の目で否定してしまうのはもったいない話です。


■食わず嫌いを止めて聖地巡礼に行ってみた。



私も昨年の夏に機会があったので聖地巡礼をしてみました。何事も経験せずに、善し悪しを述べるのは良くないですからね。

私が行ったのは長野県大町市にある木崎湖です。ここはアニメ「おねがい☆ティーチャー」と「おねがい☆ツインズ」いわゆる「おねがいシリーズ」の舞台になった場所のひとつです。昨今のアニメ聖地巡礼ブームの元祖だったと記憶しています。

アニメ作品の聖地巡礼というものがまだそれほど一般的ではなかった頃に、そういうものがあるという事を知ったのがこの作品の聖地巡礼です。ネットにいくつかレポートがあがっていて、関心はありました。


■実際に聖地巡礼に行ってみた感想


それで昨年の夏、青春18きっぷで関東のほうへ行こうと計画しまして、せっかくだから以前から気になっていた木崎湖に行ってみようと思いました。そのときの様子は以下にレポートしてますんで、そちらを見て頂きたい。


■横浜、長野、関西方面旅行レポート4「木崎湖〜おねがいシリーズ聖地巡礼〜」渚屋Archive
http://nagisaya.seesaa.net/article/120726593.html



レポートにも書いていますが、行く前は、けっこうおっかなびっくりで、私みたいなおっさんが一人で聖地巡礼などすると気持ち悪るがられて、後ろ指さされそうだったので、できるだけこっそり行こうと思ってました。

行ってみるとそれはおおきな間違いだったと気付かされました。私自身偏見で聖地巡礼というものをとらえていたなあと反省したものです。

結果としては、地元の人たちもめっちゃくちゃ優しかったし、白い目で見られる事もなかったし、どちらかというと歓迎ムードだったように感じました。観光のひとつの目玉として受け入れられているように感じました。

恐らくは今まで訪れたファンの人たちがモラルを守り、地元の人たちと積極的に交流して、嫌われないように、良い印象を得られるように、迷惑にならないように努力してきた結果だと私は感じました。

ここでもやはり昔は騒いだり、巡礼ノートを持ち帰ったりしたマナーの悪いファンが居たようです。でも、ネットなどでの呼びかけをしてマナーの向上を訴えたりした結果、今の良好な状態にできたんだと思います。基本的にみんな
作品のファンなんですから、作品の品位を穢す事を、本物のファンがするはずはありません。

そういう事をするのはにわかファンか元々モラルのない人間です。それは聖地巡礼という行為が悪いのではなくて、その人間個人が悪いだけです。


■一部の非常識が常識になる怖さ。


多くの人間が集まり、分母が大きくなると、それに比例して、変な人間の割合も増えてくるものです。なにもアニメの聖地巡礼に限ったことではありません。また困った事にそういった非常識な行動を取る人間は目立つので、その集団全体がそういう人間で構成されていると、外部の人間は思いがちです。

聖地巡礼をしている人たちもほとんどが礼儀正しくマナーを守って場を荒らさないように気を使ってる人たちだと思います。誰だって自分たちの印象を悪くするような事はしたくありません。そもそも、自分の好きな作品のイメージに泥をぬるような事は避けたいと思っています。

しかし、一部の不心得者がそういう多くの人の思いを平気で踏みにじります。そういう者の中には、作品にさほど愛情のないにわかファンや冷やかしに来たファンでも何でもない人間もいるでしょう。こういう人間は残念ながらどこにでもいるものです。


■アニメファンもサーファーも問題は同じ


私は一時期、ボディーボードをやっていました。そのときよく波乗り系のサイトなどを覗いていたんですが、彼らの中にも同じような問題が常に持ち上がっていました。

駐車マナーやゴミのポイ捨てなどする一部の不心得者のせいで地元住民とトラブルになり、そこの砂浜が波乗り禁止になってしまった
という事例をよく聞きました。

ほとんどのサーファーはきちんとモラルを守って波乗りを楽しんでます。また積極的な人は自らビーチクリーンなどのボランティア活動を通して地元民に好印象を持ってもらおうと努力をしています。

しかし、そんな事もお構いなしに、突然、浜に現れてやりたい放題やって去っていく不心得者のせいで全部が水の泡になってしまいます。怒った地元サーファー(ローカル)は余所者(ビジター)を絶対入れないというような強硬手段に出る者もいて、ローカルとビジターの間で論争が延々と続いてました。

この問題は、今の聖地巡礼の問題に似ているような気がします。波乗りや聖地巡礼だけに限りません。どんな趣味にもそれを乱す少数の不心得者がいて、そいつらのせいでイメージが下がってしまう事、それをやってる人間が白い目で見られることはよくある話です。

自分たちの中から困った人たちが出ないように努力する事は必要ですが、どんな集団にもそういう困った人たちがいるという事を理解し、自分たちが偏見で他の集団を判断することがないようにしたいですね。


■武将萌え聖地巡礼についてかく思う


聖地巡礼として話題になったのは「戦国BASARA」などで”武将萌え”をしている女性たちの聖地巡礼。いわゆる歴女というやつですか。


■「政宗さまに会いに来ました!」 若い女性の“武将萌え・聖地巡礼”ブーム …イラスト絵馬に「御英霊に失礼ではないか」との苦情も まにあっくすZ
http://maniaxz.blog99.fc2.com/blog-entry-2751.html



こちらも賛否両論。絵馬にかかれたアニメ風キャラ絵に神社が困惑していると話題になりました。しかし、まあ歴史好きな私としては、きっかけはなんであれ、自国の歴史に関心を持ってくれるのは良いことだと思いますけどね。お隣の国のスターを追いかけたり自国の歴史そっちのけで、あちらの国の歴史ドラマに夢中になったりするよりよほど健全だと私は思いますよ。

たしかに方向性や行動は問題あるかもしれませんけど、そこからちゃんとした歴史に興味を持つ人間も少なからず出てくると思いますし、目くじらたてるほどのものでもないとは思います。

興味を持つきっかけなんて何でもいいではありませんか。きっかけに優劣をもつのってよくないと思います。アニメやゲームがきっかけでも良いではありませんか。私だって歴史を好きになったきっかけはオカルトだし…。

ただ、この場合、神社側がほんとうに嫌だというのならば、禁止にしてもいいとは思いますね。好ましくないと思ってることをはっきり表明すれば、それをする人は減ると思うし、それでも描く人が後をたたないのであれば批難されるべきだと思います。でも放置状態でうだうだ言ってるのはどうかなと。絵馬を売って儲けているわけですし。


■行ってわかった聖地巡礼。


そういう訳で、アニメの聖地巡礼はネットとかで面白おかしくかき立てられるほど悪いものでも、批難されるものでもありません。普通の常識を持って行動すれば、何の問題もないのです。当たり前の気遣いをすればいいだけのこと。できるならば事前に調査して、どういう場所でどういうルールがあるのか、知ってから行ったほうがいいですけどね。

行って楽しんで、人と交流して、作品に対する理解を深めて、想い出を持って帰ってくればいいんです。きっといい想い出になること間違いなしでしょう。私も木崎湖は忘れられない想い出になりましたし、また機会があったら行きたいと思ってます。アニメの舞台としてじゃなくても、良い所ですからね。

レポートにも書きましたが、木崎湖は、九州に住んでいる私にとって、おねがいティーチャーというアニメが無ければ一生行くことも、知ることも無かった場所だと思います。ほんと不思議な縁ですよ。行けてよかったです。


聖地巡礼、みんなが言うほど怖いものでも悪いものでもないので、気になる場所がある人はぜひ行って見てください。私も機会があればどんどん行ってみたいと思っております。



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